杵築市大田　　　　　　　　　　　　　　　２０２５ 年１１ 月２２日（土）快晴 　山里の紅葉と文化財 杵築市大田小野： 　比枝神社，　山神宮，　諸田越板碑，　財前家墓地・宝塔　   　 　３週間ほど前、「田原家五重塔ほか」と題して、杵築市大田の文化財や神社を訪ねてきた。今回はその第２弾、季節の進むのを待って紅葉の山里を計画し、国指定重要文化財といわれる「財前家宝塔」などを訪ねてきた。 比枝神社の紅葉（クリック拡大） 　現地へのアクセスは、今回もまた国道１０号線を行き、山香町から「風の郷」などを経て鋸山トンネルを抜けていくコースで向かった。　「杵築市大田」の看板が現れると下り坂が多くなり「金谷トンネル」を抜ける。「あ、モミジ！」期待が膨らむ。 金谷トンネルを抜けると 鮮やかなモミジ 　道は杵築市大田庁舎の脇に出て、県道３４号線を１㎞ほど西行すると県道３１号線（山香国見線）と合わさる。　「またやってきました～」で、沿道の「白髭田原神社」や「田原家五重塔」などを通り過ぎていく。前回、最後に立ち寄った「田原若宮八幡社」も、秋祭りが終わり静かな山里の風景となっていた。 紅葉と市指定文化財の 　比枝神社（杵築市大田小野） 　県道３１号線（山香国見線）を、さらに約２．３㎞後、前方に鮮やかなモミジのトンネルが見えてきた。「あれだ！」右側に駐車スペースがあり「比枝神社」入口に到着。 田原若宮八幡社 比枝神社到着 比枝神社入口 位置図（クリック拡大） 　入口の両側には幟旗が立っており、もしかして秋祭り？　前回の「田原若宮八幡社」では、秋祭りの前日ということで、境内は忙しく準備していたことが思い出される。 　石段の上には鮮やかな紅葉が見えており、期待しながら登り始める。　鳥居をくぐると、「お～、これはお見事！」左側には大きなモミジの木があり、回廊のような地面は赤い絨毯で敷き詰められていた。ベストタイミングだろう。 比枝神社の紅葉（クリック拡大） 　正面には一対の仁王像があり、国東地方らしくユニークな形相をしていたが、なんとも可愛い雰囲気が伝わってくる。　ご神門をくぐると比枝神社の社殿（拝殿）に到着。まずはお参りしておこう。 比枝神社（拝殿） 　社殿の左わきに社務所があり、関係者の幾人かが何やら準備をしていた。　「こんにちは～」 「明日が祭りじゃけん、準備を始めたところじゃわ」　なんと、ここも祭りの前日だった。なんとも奇遇なこと、杵築市大田で２回続けて当りとなった。きっと、いいことがあるに違いない。 市指定天然記念物「カチシバ」 　社務所の脇に御神木があり、市指定天然記念物の標柱「比枝神社のカチシバ」となっていた。樹齢や大きさ等はわからないが、ナギノキのことらしい。 比枝神社のカチシバ（クリック拡大） 市指定天然記念物 カチシバ（ナギノキ） 　長老らしき人が、比枝神社のことや、指定文化財、天然記念物なども話題に出し、カチシバとは、ナギノキのことだが、戦に出るとき縁起で「カチシバ」と呼ぶようになった。などと語っていた。　また、「こん先には、文化財になっちょらんが、珍しい形をした鳥居が立っちょるんで」などと、教えていただいた。「ありがとうございました」　あとで、寄ってみよう。 市指定有形文化財「比枝神社古碑」 　本殿の左脇、玉垣に囲まれた中に、市指定有形文化財の標柱「比枝神社古碑」が立っていた。注連縄の懸けられた２基を含み５～６基が並んでいるが、標柱以外の情報はなく、建造された年代などは判然しなかった。 比枝神社古碑（クリック拡大） 　事前の調査で、紅葉もみられるということで「比枝神社」に立ち寄ったが、予想以上の見栄えに感動！　見事な紅葉でした。　市指定の文化財や天然記念物も長老の「語り部？」付きで拝観することができました。 そして 　珍しい形をした鳥居＝山神宮（杵築市大田小野） 　「比枝神社」で教えていただいた「鳥居」は、県道３１号線をさらに北上し、約１．６㎞後、左側の石垣の上にポツンと立っていた。鳥居の一部が欠けており、伺っていた通りの姿を見せている。 石垣の上に鳥居 位置図（クリック拡大） 　民家の脇に、それらしい道があり、ゆるやかに登っていくと「石書大乗妙典塔」と刻まれた石塔や石洞、石殿などが置かれていた。鳥居との関連があるのだろうか、左上に回り込んで鳥居の前面に到着。　防獣柵が張られており、傍までは寄り付けないが扁額には「山神宮」とあり、鳥居の柱には「元文五年庚申四月」などと判読できる。（元文五年＝１７４０年：江戸中期） 大乗妙典塔など 鳥居の前面に到着 「山神宮」一部が欠けた鳥居 「山神宮」となっていたが、説明板等もなくそれ以上の情報は判らなかった。鳥居に刻まれた元文５年（1740）とは江戸中期のこと。　文化財には指定されてないが、珍しい史跡・遺跡に出逢いました。 県指定文化財の 　諸田越板碑（杵築市大田小野） 　先の「山神宮」からＳ字カーブを曲がった先に広い駐車場があり、「諸田越板碑」と「財前家墓地・宝塔」はここに停める。まずは、県指定文化財の「諸田越板碑」へ 　県道沿いに説明板があり“県指定有形文化財：諸田越板碑：所有者・財前仁彌：年代・南北朝時代（1366）：市内小野田原河内諸田越し道の左側の桑園にある、堂々たる種子を持つ秀れた作である。総高１．６６ｍ。水平断面に対してへこみをなしていることは、国東半島板碑の特徴である。貞治第五初秋上旬（1366）：杵築市教育委員会”などとなっている。 県道沿いに説明板 説明板（クリック拡大） 　横の市道沿いに板碑や石塔群が並んでおり、総高１．６６mの板碑は見上げるような位置となっている。“へこみをなしていることは、国東半島板碑の特徴である”となっており、それとなく納得。南北朝時代の秀作・県指定有形文化財の「諸田越板碑」でした。 板碑 右脇の石塔群 諸田越板碑（クリック拡大） 県指定史跡・国指定重要文化財の 　財前家墓地・宝塔（杵築市大田小野） 　駐車場に戻り、改めて「財前家墓地・宝塔」に向かう。穏やかな小春日和となっており、振り向くと、遠く由布岳や飛岳が霞み、右側の青垣は御許山や雲ケ岳かもしれない。 財前家墓地へ 位置図（クリック拡大） 　ここもまた県道沿いに説明板があり“財前家墓地（県指定史跡）：紀氏の血を継ぐ財前家の供養塔を中心に約百基あまりの石塔群が散在している。　中でも総高２.９７ｍの国東塔は、財前家の祖先、財前美濃守の墓と伝えられ、逆襲のために建てられたものである。尚、この塔は昭和２９年に国指定重要文化財に指定されている。”などとなっている。 県道沿いに説明板 説明板（クリック拡大） 財前家墓地へ 石段を上がり 左に回り込むと 財前家宝塔（クリック拡大） 　財前家宝塔は国指定重要文化財となっており、総高２.９７ｍの国東塔は、財前家の祖先、財前美濃守の墓と伝えられている。　すぐそばまで寄り付くことができ、「お～、すごい！」圧倒されるほどの大きさを魅せている。　財前家墓地は、その宝塔を中心に多くの石塔群が散在しており、足の踏み場もないくらい密集していた。 財前家墓地石塔群 財前家墓地石塔群 財前家墓地の上方にも 　財前家墓地入口から、さらに上方に向かうコンクリート歩道があり、気になりながら辿ってみることにした。すぐに樹林帯となり古くからの墓地だろうか、林内に石塔などが散在していた。「やっぱり！」　さらに上方へ続く踏み跡もあったが、比較的新しい墓地もあり、探訪はここまで、往路を引き返した。 歩道を上方へ 林内に墓地群 古い石塔群や 新しい墓地も 「よっしゃ」、で、降りついたその時、「あっ、財前家のご主人？」、作業服姿の財前さんと出逢った。テレビでもお目にかかっており、雰囲気ですぐに判った。「今日も、昼過ぎのテレビで放送されるヨ」などと、愛想よく話を返してくれました。 　今回は紅葉情報で比枝神社に照準を合わせ、近隣の文化財は国指定となっている財前家墓地・宝塔を主体に国東地方の一端にある杵築市大田の小野地区を探勝してきた。 　穏やかな小春日和は、山里のもみじを鮮やかに染め上げ、感動的な美しさを魅せていました。　また、国指定レベルの財前家宝塔は３ｍ近い大きさを誇り、周辺の宝塔群とともに大きく印象に残っています。