臼杵市乙見 2025 年 9 月 13 日（土） 晴れ
ダム湖に浮かぶまぼろしの石橋
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大分県臼杵市： |
半三石幢， 電子基準点「臼杵」， 乙見橋（近戸橋）， 乙見ダム |
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臼杵市の山奥には、ダム湖に浮かぶ「まぼろしの石橋」があるという。
Ｗｅｂ情報でも諸説あり、かなりミステリックな情報となっている。が、信用のおける「おんせん県おおいた」や「土木遺産in九州」などにも載っており、是非とも訪ねてみることにした。 せっかくだから、途中の文化財や見どころなどにも、立ち寄りながらの探勝を計画した。
市指定有形文化財
半三石幢(六地蔵塔) （臼杵市中臼杵半三）
大分市戸次から県道２５号線（臼杵上戸次線）を行き、吉野地区を経てさらに南下していくと、鍛冶郵便局などがあり「中臼杵地区」に入っていく。「中臼杵バス停」を過ぎて約５０ｍ後、鋭角左に曲がる市道があり、狭い坂道を上っていく。約５５０ｍ後の三差路を右折すると「あ、あれだ！」お堂と石幢があり「半三石幢」に到着。
半三石幢のあるお堂
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位置図（クリック拡大）
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説明板をみると“この石幢は凝灰岩からできており、六地蔵塔です。総高が２.６２ｍで、笠は深く、浮彫りされている六体の地蔵像と二体の仁王像。珍しいのは、仁王像の一体が横向きに彫り出されている。形態から室町時代中期ごろの作と思われる。「善住寺」と呼ばれる寺があった場所であり、他にも宝篋印塔や庚申塔などの石塔が残っている。”などとなっている。
半三石幢と説明板
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説明板（クリック拡大）
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半三石幢（クリックで拡大）
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お堂の前には一対の燈籠があり、「安永四年」と刻まれていました。 江戸時代中期の１７７５年となり、説明文の“「善住寺」と呼ばれる寺があった場所” ではないだろうか。 想像はそれくらいにして、先ずはお参りしておこう。お堂の中には仏間が祀られており、格子戸の中は見えませんでしたが、ろうそくや線香立て、お酒やお花なども供えられていました。
燈籠とお堂
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お堂の中
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説明板に“仁王像の一体が横向きに彫り出されている。”となっており、改めて笠の中を拝むと、六地蔵のほかに十王の閻魔様や「横向きの仁王像」などが彫り出されていました。
石幢の龕部
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横向きの仁王像（クリック拡大）
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説明文の最後に“他にも宝篋印塔や庚申塔などの石塔が残っている。”などとなっており、気になりながらお堂の境内や周辺を探してみたが、判りませんでした。 室町時代中期の作と云うことだが、５００有余年前となり、すらりと背の高い石幢と、「横向きの仁王さま」が印象に残ります。
電子基準点「臼杵」（臼杵市掻懐：南中学校）
県道に戻り、さらに下って行くと国道５０２号線の障子岩交差点となり左折する。 臼杵石仏など向かう国道を約７００ｍ後、右に「掻懐キリシタン墓」の道を分けると目的地は近い。左側に臼杵川が見えるようになり、その対岸に「あれだ！」 目指す「電子基準点」のポールも現れた。
その直後、信号機のある三差路を左折し狭い橋を渡る。「南中学」の一角となり、細道を左に進む。 約５０ｍ後、桜の木の隙間にポールがあり、電子基準点「臼杵」に到着。 横から回り込むと背の高いポールがあり、説明板も置かれていた。
桜の木と電子基準点
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位置図（クリック拡大）
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電子基準点「臼杵」（クリック拡大）
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説明板
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その説明板にも詳しく記されているが、ポールの中ほどに「説明文」が刻まれており“基本電子基準点ＮＯ，０２１０７９：この電子基準点は、地上約２万ｋｍの高さを周回するＧＰＳ衛星から出された電波信号を受信しています。 受信データは、つくば市にある国土地理院にリアルタイムで転送されています。この受信データで正確な位置を求めて、土地の測量や地図作成の基準点として利用されています。また、地震・火山噴火等の重要な地殻変動の監視を行っています。：国土地理院”などと記されている。
ポールの足元には丸い「付属標」がはめ込まれており“電子基準点付属標：基本：）ＮＯ，０２１０７９Ａ：国土地理院”などとなっていました。
ポールの説明文（クリック拡大）
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付属標
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電子基準点の南には臼杵川があり、今日は穏やかに流れている。と、そこに「カワウ」が居り、あっという間に川魚を捕まえた。１５,６ｃｍの大きさに見えるが、たぶん「アユ」だろう。のどかな、ひとときの一コマでした。
市指定有形文化財
近戸橋 （臼杵市乙見）
国道５０２号線を行き、「臼杵石仏」入口の少し西側、南に向かう県道６３３号線（川登臼杵線）に分岐する。 市街地を抜けると郊外のドライブコースとなり、のどかな田園風景が広がってくる。色づき始めた田んぼがうれしい。
約４．２ｋｍ後、左から県道２０４号線（津久見野津線）と合わさり、さらに約６００ｍ後、ゆるやかな下り坂の先に「乙見橋」が見えてきた。目的の石橋「近戸橋」はこの橋から望むらしい。 臼杵川（乙見ダム湖）に架かる「乙見橋」に到着。
乙見橋
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位置図（クリック拡大）
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期待しながら歩きはじめ、中ほどまで歩を進めると「あっ、あれだ！」左側に、「近戸橋」が現れてきた。運よくダム湖に浮いているが、雑草やクズに覆われ、いかにも「まぼろし」の姿となっている。 「おんせん県おおいた」のＨＰには“乙見ダムが建設されてからは、一年のうち数か月しか姿を見せない「近戸橋」”などとなっており、
左側に「近戸橋」を望む
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「土木遺産in九州」では“近戸橋は明治２６年（1893）、臼杵川を渡る藩道の間戸水車橋に代わって、その下流に架けられた石拱橋です。乙見ダムが完成した昭和４３年（1968）までは、観光路線の使命も果たした橋でした。現在は下流側に新たなＰＣ架設されている。ダムの満水時には、湖の底に隠れ、渇水時は現れる幻の石橋です。”などとなっている。
近戸橋（クリックで拡大）
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近戸橋のデータは：所在地/大分県臼杵市乙見、完成年/明治２６年（1893）、臼杵市指定文化財：石アーチ：橋長/２６.７ｍ 幅員/５．４ｍ，支間/２３.７ｍ（１連） 拱矢/１１,１４ｍ
乙見橋の下流側には「乙見ダム」の堰堤が見えており、満水でもなく、渇水でもない状態になっている。 ダムに行く道も在りそうなので、あとから行ってみよう。
下流側に乙見ダムの堰堤
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道路記念碑へ
乙見橋を渡り終わって、さらに約８０ｍ後、右カーブの三差路に大きな石碑が置かれていた。情報では、この場所に移設されたそうです。 石碑の右から「道路橋梁記念碑」：大正四年春建石」と刻まれており、縦書きの碑文は、すべて漢字で陰刻されている。その内容は、多岐にわたっているようだが、中ほどに「近戸橋」の文字も見え、文末には、発起者名として、川登村長、田野村長、南津留村長の名が連名で刻まれていた。
道路橋梁記念碑
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道路橋梁記念碑
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近戸橋へ？
乙見橋の袂に戻ると、「近戸橋」に向かうような分岐路があり、民家の前を歩いて行くと「こんにちは～」家の前に人が居り「そん先じゃが、今はもう、行かれんじゃろう。」などと、教えていただきました。 段差の先に続く草道を指さしていたが、傍に行くと「とても、とても」現実的ではなく、「近戸橋」までの探訪は断念した。
乙見橋の袂に分岐路
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草道の先に？近戸橋
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「土木遺産in九州」の紹介文は、主題の「近戸橋」だけではなく、それ以前の「間戸水車橋」から続く２００年の歴史を、石工や請負人などの情報も含みながら詳細に表記しており、“２００年の時を刻む幻の石橋” という意味合いも理解できます。
乙見ダム （臼杵市乙見）
県道を少し戻ると、上り坂の三差路に「ダム入口」のバス停があり、左折して狭い市道に進む。対向車が来ませんように。 カーブの多い下り坂だが約４００ｍ後、ダムの管理事務所があり駐車スペースに到着。
駐車スペースには「乙見防災ダム建設記念碑」が置かれており、建設の経緯や結果などと共に感謝の意味合いも刻まれていました。 堰堤の入口には「竣工昭和４３年度完成」の石板もはめ込まれており納得。
乙見ダム事務所
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位置図（クリック拡大）
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乙見ダム
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さて、はて、先の「乙見橋」は見えるだろうか。上流となる左側を気にしながら、中ほどまで行くと「あっ、あれかな？」赤い橋げたが、ちょっとだけ見える。「あっ、車も通った。」 思ったより小さく見えるが、「乙見橋」を視認。 右側は下流域となり、少しの水量が流れ下っていた。
上流の乙見橋を見る
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下流側の流れ
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上流側に乙見橋（クリックで拡大）
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思ったより小さく見えたが、乙見ダムから「乙見橋」を確認できました。 管理事務所には人の気配もなかったが、静かな山奥に造られた防災ダムと云うことでした。
このようにして、臼杵市の山奥、乙見地区の文化財や史跡を訪ねてきたが、やっぱり乙見橋から見た「近戸橋」の姿だろう。背後には２００年の歴史も受け継ぎながら遺されている。 見た目では、草ぼうぼうになっており、落ちぶれ果てた田舎侍を彷彿させる雰囲気となっているが、話題も含め、印象に残る乙見の石橋でした。
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